閑話休題

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映画感想:ウォール・ストリート

基本情報

監督:Oliver Stone
出演:Michel Douglas、Shia LaBeouf、Carey Mulligan、Josh Brolin
公開年:2011年
鑑賞形式:劇場(早稲田松竹
粗筋:オリバー・ストーン監督&マイケル・ダグラス主演による名作「ウォール街」の23年ぶりの続編。前作の最後に逮捕され収監されたウォール街のカリスマ投資家ゴードン・ゲッコー(ダグラス)が長い刑期を終えてニューヨークに帰ってきた。疎遠になっていた娘ウィニーとの関係修復にとりかかるゲッコーだったが、ウィニーは強欲な犯罪者の父親を毛嫌いしていた。そんな中、ゲッコーはウィニーの婚約者でウォール街で一旗揚げようとしている野心家の青年ジェイコブと出会う。



感想:
 前作は「古き良きアメリカ」を体現する製造業と力を増しつつあったウォール街とのせめぎ合った末に、グリーディーなウォール街の人間に罰が下るという勧善懲悪的な要素が入っていた。日独に押され製造業の衰退が顕著だったアメリカが大きな構造転換期にあるがゆえの構造であろう。
 今作は前作でゲッコーが言い放った「欲は善である」が完全肯定された、リーマンショック前夜のアメリカが舞台だ。サブプライムローンに代表されるように全米の人たちが欲にかられ、我先にと金融商品を購入した。
そうしたアメリカの状況を本作は否定的に描く。8年間を塀の中で過ごしたゲッコーは、投資活動には否定的な姿勢を取る。長きにわたった裁判とその後の刑務所暮らしで家族は崩壊。いくら金を持っていても、時間や家族の幸せまでは買えないという事実をいやというほど思い知らされた彼は、金よりも娘との復縁を望んだ訳である。
しかしゲッコーが「改心」した様子と強欲なウォール街の証券マンの没落をを対比的に描くだけではあまりにも味気ない。そこでオリバーストーン監督は途中でミスリードを仕掛けてくる。ゲッコーが約束を破り金を我がものにした時には「やはり人は変わらないのか」と思った人も多かったはずだ。しかしゲッコーは最後の最後にジェイクとウィニーのもとにもどってくる。一度ミスリードを仕掛けられることによって、「金よりも時間や家族の方が大事」というメッセージはより強い説得力を帯びる。
 アメリカは変わらなければいけないのだというメッセージが強烈に滲み出た一作、必見である。