閑話休題

ブログの効能と言わば何ぞ其れ日々の由なし事の記帳に限らんや

映画感想:ホワイトハウス・ダウン

基本情報

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:チャニング・ケイタム,ジェイミー・フォックスマギー・ギレンホールジェイソン・クラーク
公開年:2013年

あらすじ

インデペンデンス・デイ「2012」ローランド・エメリッヒ監督が、謎の組織にホワイトハウスが乗っ取られ、ワシントンD.C.が危機に陥る様子を描くアクション大作。議会警察官のジョン・ケイルは、大統領のシークレットサービスになるため面接試験を受けるが不採用となってしまう。

幼い娘をがっかりさせたくないと、ジョンは娘をホワイトハウスの見学ツアーに連れ出すが、その時、謎の武装集団がホワイトハウスを襲撃、占拠するという前代未聞の事態が発生する。政府が大混乱に陥る中、ジョンは大統領や娘、そして合衆国の命運をかけた戦いに身を投じる。主人公の警察官ジョン・ケイル役に「G.I.ジョー」のチャニング・テイタム、米大統領役に「ジャンゴ 繋がれざる者」のジェイミー・フォックス
ホワイトハウス・ダウン : 作品情報 - 映画.com

感想

圧倒的なスペクタクル映像

 本作の監督ローランド・エメリッヒは,「インディペンデンスデイ」「2012」など,壮大な規模の出来事を扱った大作映画を作ってきた.本作もご他聞に漏れず,合衆国大統領官邸通称「ホワイトハウス」が爆破されるという突拍子もない大事件の顛末を描いている.
 本作の魅力は単純明快.映画でなければ見られないようなド派手な光景にほかならない.トレイラーでも放映されているホワイトハウスが爆破される様子や,大混乱に陥るホワイトハウスの様子などが精巧な映像技術によって描かれ,フィクションと分かっていても素直に興奮してしまう.アクションシーンはホワイトハウスの建物の構造を踏まえた上で設計されており,これも魅力的である.とにかく「ぱねぇシーンがガンガン来て超アガれる映画が見てぇ!」ということであれば,この映画は十分に期待に答えてくれるはずである.

しかし,である.

 良いところはそこだけなのである.本作は残念ながらディティールとストーリーがこの上なく粗いのである.
 ディティールの雑さは挙げ始めればきりがない.メディアは大統領が打ち出したイランとの和平条約に対してステロタイプに軍産複合体が反対していると喚き立てる.いくらなんでも直線的で浅い分析はしないはずである.あからさまに怪しいなりをした薄汚い集団がいとも簡単にホワイトハウスの中枢部へと侵入することに成功する.あんななりの奴らは入れないし,監視するはずだ…and so on.
 ストーリーもあまり力が入っていないように見えた.準主役とも言うべきテロリスト達のバックグラウンドha
非常に雑な形で「極右青年」等と説明されるのみ.他の主要登場人物についても殆どバックグラウンドが説明されない.ホワイトハウス占拠の首謀者の主要な動機となるある人物の死もセリフの形で説明されるだけなので,登場人物が一体どんな思いを背負って戦っているのか,ということに関しては感情移入のしようがない.さらに物語の最終盤に出てくるオチとも言うべき事実もセリフの形で処理されるのみで,唐突な感が拭えない.事程左様に細部の作り込みへの情熱の欠如やストーリーテリングの稚拙さが顕著ではっきり言って中盤からは物語の部分を真面目に見る気は失せてしまう.邦画で言えば「踊る大捜査線」シリーズを彷彿とさせるような雑な展開で話が進んでいくので,「勝手にやってくれ」と思ってしまい,ストーリーに付き合う気力が失せてしまうのである.もはや作り手側が「きちんとした映像さえ取れればストーリーはまあ無難にまとめておけば良いだろう」と高をくくっているような気すらしてしまう.

ノイズキャンセリングのススメ

 ここまで書いて来たように,本作は映像としてのパワーは非常に優れているにもかかわらず,ストーリーが雑で,その雑さがノイズとなり素直にアクションシーンやスペクタクルな映像に興奮することを妨げるのである.
 であるならば,もうストーリーの雑さには目をつぶって細かな描写のおかしさにはツッコミを入れず,意図的にバカになって興奮を味わうように努めた方が楽しめるのではないか.これが「ノイズキャンセリングのススメ」である.良くないところを色々と書き連ねたが,やはり純粋な映像の力を映画館で楽しむことはどんな感動的な方が作品にも出来ない大作映画の強みであるのだから.
 映画の見方が十人十色であることは自明の命題であるが,映画を見たら楽しまなければそんなこともまた自明の命題である.

Zero Dark Thirty

本作を見ると,所々でZero Dark Thirtyの続編であるかのような錯覚にとらわれる.全く別系統の映画なのにである.一つの理由は舞台設定が「Zero Dark Thirty後」のような設定だからだろう.また今ひとつの理由としては,助演のジェイソン・クラークがZero Dark Thirtyにも出演しており,彼のZero Dark Thirtyにおける役と本作における役が連続性を持っているように見えると言うことも挙げられるだろう.映画の完成度としてはZero Dark Thirtyとくらぶべきもないが……