閑話休題

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映画感想:ダーティ・グランパ ーデニーロとザックエフロンの生み出した駄作ー

孫と祖父が一緒のベッドで寝ている.祖父は下ネタをごちゃごちゃと話し続け,うんざりした孫は祖父に背を向けて眠りにつこうとする.すると祖父は自分のペ◯スを孫の顔に近づけて孫を起こそうとする.これが本作を象徴するシーンである.面白そうと思えた人はぜひ劇場へ行かれたし.そうでない人には残念ながらこの映画はお勧めできない.何故ならこのシーンがこの映画のなんたるかを象徴しているから...


Dirty Grandpa Official Trailer #1 (2016) - Zac Efron, Robert De Niro Comedy HD

あらすじ

 祖母の葬式に参列した新進気鋭の弁護士ジェイソン(ザック・エフロン)は,40年連れ添った妻を失い悲嘆にくれる祖父ディック(ロバート・デニーロ)と再会する.葬式後,ディックはジェイソンにBoca Raton, Florida への傷心旅行のドライバー役を依頼する.ジェイソンは一週間後にフィアンセのメレディス(Julianne Hough)との結婚式を控えていたが,幼少期共に時間を過ごした祖父たっての希望を無下には断れず,フロリダ行きをしぶしぶ了承する.
 しかしディックの真の目的は若い女を漁ること.Bocaへの道中大学生の女二人がDaytona beach, Florida へと向かうことを知ると,ディックはすぐに行き先を変更.Bocaで1日を過ごした後ジェイソンを説き伏せてDaytona beach, Florida へと移動し,彼女らと享楽的なナイトライフに興じる.最初は乗り気でなかったジェイソンも酒の勢いに負けて乱痴気騒ぎを起こし警察沙汰になる始末.そしてジェイソンは女二人組のうちの一人のシャディア(Zoey Deutch,大学のクラスメート)と親密になっていく.
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 結局ジェイソンは式のためにアトランタへと戻り結婚式に参加する.しかし,ディックのいたずらでジェイソンの乱痴気騒ぎの様子が式場スクリーンに大写しになり式はカオス状態.結局結婚の話は破談となるが,最終的にはジェイソンはシャディアと結ばれ,ディックも女二人組のうちのもう一人レノア(Aubrey Plaza)との間に子供をもうけるシーンでエンドロールが始まる.

ブラックジョークが笑えない

ただただインモラル

 この映画が面白いか否かはブラックジョークで笑えるか否かに尽きる.アプローチは非常に明確だ.とにかく下品なインモラルな行動や描写を重ねる.ドラッグ,セックス,人種差別, 暴力…etc. 作り手側はそれが笑いを引き起こすに十分な要素であると考えている節がある.
 But is that really true for majority of audience? Definitely NO! 特に下ネタの描写はどぎつくて気分を害するだけでとても笑えない.マイノリティーへの差別的表現は少なくとも日本人には笑うだけのバックグラウンドがないから笑えない.ドラッグを吸うシーンががっつり出てくるのもあまり気分は良くない.
もっとも顕著な例は冒頭に書いたぺ◯スのシーンだが,自分が最も気分を害したのは,留置所に入ったジェイソンが出所する際,警官から過去に留置された凶悪犯が置いていった精子のこびりついたパンツを渡されるシーンだ.多分作り手はこれをギャグとして提示しているのだろうが,このシーンで笑った人などいたのだろうか?
事程左様にこの映画にはあらゆる意味で「ダーティー」なシーンが満載される.しかしブラックコメディというのはこうした描写だけで成立するほど甘いものではないはずだ.
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他の映画と比較すると...

 ブラックコメディでパッと思いつくのはTEDシリーズ.ドラッグ,差別,セックスといったものでギャグが構成されるが,感想は本作とは大きく異なる.それは主人公のテディベアのテッドが「愛されキャラ」だろう.テディベアにブラックジョークをやらせるというアイデアの勝利に他ならないのだが,ダーティーなシーンをよりマイルドにする効果は確実にあった.生々しさも薄れる.テディベアが朝っぱらからドラッグを決めているというのはちょっと笑っちゃうよね.「この愛されキャラ」という要素は多くのコメディに共通する.チャップリンの演じたキャラクターにせよミスタービーンにせよ,愛すべき存在として観客の多くは彼らに肩入れしながら映画を見ることができるはずだ.
 一方ダーティ・グランパには愛すべきキャラクターが一人も登場しない.それは脚本の問題なのだと思うが,ディックは頭がおかしいようにしか見えないし,ジェイソンも薄っぺらい.女たちに至ってはその人間性は全く読み取れなかった.

THE BIGGEST FAULT

 それでも笑えるシーンはそれなりにあった,結婚式でビデオが流れるシーンとその後にジェイソンとメレディスの伝言ゲームのシーンなどは面白かった.またロードムービー要素もある.ジェイソンとディックは3月くらいにジョージアからフロリダへと自動車で移動するわけだが,現在ジョージア州に在住する僕としては春のフロリダのバカンス感を感じられただけでもテンションが上がった.

 しかし僕がこの映画で一番嫌なところは,無理にシリアスなトーンを持ち込もうとしているところだ.おそらく作り手としては「卒業」のプロットをなぞりたいという意図があったのだろう..本作のジェイソンは「卒業」におけるダスティン・ホフマンと同じようなキャラクター設定がなされている.若くしてエリートコースに乗り前途洋洋だが,そのまま自分の人生が「典型的な幸福な人生」へと収斂しつつあることに焦燥感を感じ,煩悶し,時に暴走するというのは両者に共通する性質だ.しかし決定的に「卒業」と異なるのは脚本の出来だ.はっきり言ってダーティ・グランパの脚本は荒唐無稽でご都合主義だ.なぜジェイソンがシャディアを愛するようになったかはほとんど描かれていない.ジェイソンはディックと一緒にナンパしただけだ.にもかかわらずジェイソンはフィアンセを捨ててまでシャディアを求める.これではジェイソンがとんでもない色狂いに見えるだけだ.内面の葛藤を読み取ることはほぼ不可能だ.

もちろんコメディ映画だから脚本にご都合主義が持ち込まれることや多少アラのあるプロットが用いられること自体は問題ないと思う.しかしであるならばなおさらシリアス要素は排して純粋にコメディにしたほうがよりテンポの良い映画になったはずだ.

ROTTEN TOMATOES

最後にRotten Tomatomes
Dirty Grandpa - Movie Reviews - Rotten Tomatoes
のレビュアーのレビューを幾つか引いて終わりたい.

  • 愛しい年配の親戚が悲惨な形で老いた自分をコケにしているのを見るような悲しさを帯びているぼすべての言葉のセンスが粗悪であり,「ダーテイ・グランパ」はひどいユーモアの駄作で全く笑えない映画だ.*1
  • ダーティグランパのような作品に対して攻撃を加えるために使える方法はごまんとある.*2

とはいえ,もしあなたがブラックジョーク好きであれば,新春にひと笑いするための映画として,一見の価値はありそうだ.