閑話休題

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ネタバレなし映画感想:KANO 1931海の向こうの甲子園 -"野球する"映画のアジア版-


映画『KANO~1931海の向こうの甲子園~』予告編 - YouTube

イノセントさがたまらなくよかった.辺り一面に広がる水田が広がる田園風景.そこを走りまわる球児たち.この映画は見たことはないはずだけど何故だが懐かしくなる景色を楽しませてくれた.ストーリーは「この筋立てなら,そりゃ泣くわな」とひねくれた感情を起こさざるを得ないようなベタな青春モノ.時間も長い.3時間の映画にする必要はなかったと思う.時間の長さ故にせっかくの終盤がグダグダになってしまったのは否めない.それでも,作り手の本物の野球愛が感じられるが故に,この映画には一種の「熱さ」があった.経済的な打算で作ったのではなくて,「野球映画が撮りたい!」という熱が作らせた映画だ.こんな映画日本でも作られないかな
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ストーリー

舞台は日本占領下の台湾.嘉義農林高校の弱小野球部は,名門松山商業の元コーチ近藤の猛特訓の元で急激に力をつけていく.激烈な台風や資金不足を乗り越えて彼らは予選を突破,甲子園でも決勝まで進出する.

示された野球映画の可能性

演者の奮闘

この映画の一番の特徴は野球映画の可能性を示したということだ.この映画では野球をプレイするシーンが非常にきちんと描かれている.ピッチャーはキチンとしたフォームから体全体を使ってボールを投げ込む,バッターは踏み込んでスイング,基本的なフットワークを使ったフィールディングとスローイング.僕は野球経験がないから経験者から見たら未熟な動きなのかもしれないが,非常にリアルに見える.演者のリアルなプレーに支えられて,この映画の野球シーンは一種のアクション映画の趣を漂わせていた.本気で野球をやっているという脚本に,演技が説得力を与えているのだ.だからこそ一つ一つのプレーが背負っているものの重みをリアルに感じることができるのだ.

CGの力

もう一つこの映画に野球映画としてのクオリティを与えていたのはCGだ.映画後半は甲子園球場での試合シーンが続くのだが,この甲子園が非常にリアルに再現されている.巨大な銀傘や当時のレンガのような素材で作られていた外野フェンス,立錐の余地なく球場を埋め尽くす観客などが極めてリアルに映像化されていた.映像技術によって本当に甲子園で試合をしているような感覚に浸ることができる.映画ならではの得難い体験だった.
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"42"と比較しても...

これまでにリアルさを追求した野球映画としては,ジャッキー・ロビンソンを題材とした”42"があったが,この映画はそのクオリティに達していた.要するにアクション映画としての野球映画が成立していたのだ.”42”を見たときは,「ハリウッドで死ぬほど金をかけたからできたんだろうなぁ」と思っていた.しかしこんな映画,台湾でも作れるんだ!じゃあ,日本でもこんな映画作れるだろ!でも,これまでに邦画でリアルな野球描写を伴った映画は見たことがない.多分課題は二つある.

一つは,キャスティングだ.KANOでも42でもそうだが,キャスティングは俳優の知名度と同じくらい野球の腕前が重視されている.場合によっては主役・準主役級の俳優に無名の若手を起用することにもなるだろう.一定以上の予算規模を持った邦画は人気俳優を起用しないことには成立しない.日本でリアル野球映画を撮る上では障壁となるはずだ.

二つ目は作り手が実話ものを敬遠する傾向があるということだ.何故か知らないが,邦画では実話ものが少ない.これは思うに過去の事件を扱う場合には,過去に対する作り手の政治的信条を明らかにしなければいけないからではないか.今回の映画でも日本の植民地支配の是非や台湾先住民族の扱いなどは避けて通れない.要するに社会に実在する人物・組織に対して特定の見方を表明することは必然的に議論を巻き起こすことになるから,微妙な話題に関してオープンに議論すること自体を忌避する日本社会では実話ものが敬遠されるのだ.このあたりは腹の据わった作り手が出てきて,実話ものをガンガン撮るという風潮を育てて欲しい.
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こういう映画は日本でも作れるはず!!!

それでは,例えば日本でのリアル野球映画を撮るとしたらどんなものが考えられるだろうか?メジャーな選手だけでも

あたりがすぐ思いつく.もう少し時間が経てば長嶋茂雄王貞治落合博満あたりもあげられそうだ.スポーツ全般に広げれば,もっとネタがあるはず.

残念ながら

それにしても,公開時期はどうにかならなかったのかなぁ?台湾では去年の春に公開されていたのだから,7月あたりに公開しておけば甲子園とタイアップしてもっと話題になったと思うのに,よりによってオフシーズンのキャンプすら始まってない頃に公開するとは...

基本情報

監督:マー・ジーシアン
出演:永瀬正敏,坂井真紀,大沢たかお,ツァオ・ヨウニン,伊川東吾
公開年:2015年
上映時間:185分

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