閑話休題

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ネタバレなし映画感想:STAND BY ME ドラえもん -過去に縛られたのび太-

暗澹たる気分

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この映画を見ていて思い出したのは,第82回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「瞳の奥の秘密」だった.25年前に担当した殺人事件の記憶から逃れられず,ずっとその記憶を抱えて悶々とし続ける男,ベンハミンを描いた作品だ.ベンハミンは現在を生きてはいるものの,意識の焦点は過去の殺人事件にあり,「今」として積み重ねられていく時間を虚無なものにしてしまう.過去と未来というベクトルの違いはあれど,この映画ののび太もベンハミン同様「今」をないがしろに生きていることには違いがない.お話全体は訳の分からないハッピーエンドに着地していたが,僕はというとそんなわけで暗澹たる気分を抱えて映画館を後にせざるを得なかった.
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 この映画の推進力は,しずかちゃんの将来の結婚相手は誰になるのか?という話題だ.のび太ドラえもんの力を借りて,しずかちゃんの将来の婿となるべく14年後の未来であれやこれやの工作を繰り広げる.しかしのび太の行動に共通しているのは,「今」の自分を改善しようとする試みがないということだ,ドラえもんの力を借りた場合を除けば,彼が主体性を持つのは14年後にしずかちゃんと結婚するため行動においてのみだ.

 こういう人間は現実世界には多く存在する.主要なエネルギー投入先が未来になってしまっている「未来志向人間」だ.のび太は14年後という確かな未来に焦点を当てているからまだましかもしれない.現実には,「未来志向人間」は「いつか〜という夢を叶える」という形で,不確かな,実現の見通しが極めて悪い将来に自分の希望を全てかけてしまう.結果として「今」はおざなりに扱われ,何の生産性もない日常が繰り返されることになる.ナンセンスきわまりない.夢は細かいステップへと分割され,今すぐ行動に移せるような作業のリストへと変換されなければ,空想妄想の域を出ることは出来ない.のび太も「未来志向人間」もそのことに気づいていない.
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 「のび太はこの後もドラえもんと楽しく暮らしましたとさ,めでたしめでたし」とでも言いたげなトーンで本作はエンディングを迎える.しかし,のび太はこの後もしずかちゃんとの結婚という確定的未来だけをたよりに生きていくのかと思うと,やはり暗澹たる気分を禁じ得なくなる.


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p.s. 映像作品として秀逸

映像はかなりきれいだなーと思ってみていたら,山崎貴監督が作ってる映画なんですね.ALWAYSや永遠のゼロ等でも映像の腕前は証明済みのVFXの第一人者ですが,アニメ作らせても凄いんですね! 3D映像絵を楽しむだけで充分元はとれる映画になってると思います.


基本情報

監督:八木竜一,山崎貴
出演:水田わさび大原めぐみかかずゆみ,木村昂,関智一
公開年:2014年
上映時間:95分