閑話休題

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火天の城〜ローランド・エメリッヒ的魅力でいっぱい〜:ネタバレなし映画感想

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 『利休にたずねよ』の田中光敏監督の前作.安土城築城を担った名工岡部又右衛の物語.原作は山本兼一の同名小説きれいな映像と安土城のスケール感は魅力的だが,お話の方はほうぼうに散らばってしまっている.

映像の美しさと壮大さは日本映画屈指

スケール感だけでお金を払う価値のある映画だ.少なくとも日本映画の中では屈指のスケール感.映画の中で歴史が動き,人だって死ぬ.文字通り「何も起こらなかった」もらとりあむタマ子とは真逆の映画だ.
 お話としては,尾張熱田の大工の棟梁,岡部又右衛門が織田信長から安土城築城の指揮を執るように命じられ,数々の困難を乗り越えながらも,信長に命じられた通り3年という短い工期で築城してみせる,というもの.まあ,これ以上書いてもしょうがないというくらいストレートなお話なんです.

 この映画ではそんなストーリーは2次的なもの.とにかく映像の力が凄い.それはCGに頼ったハリボテのものではなく,金と手間をかけた,生の映像の力に他ならない.ちなみに,ロケがどんだけ大規模だったかは,関西ロケ地ガイド『火天の城』|特集|eo映画に書かれている.淡路島に原寸大の敷地を確保してやるとか,世界のクロサワ的発想だな(笑)
 圧巻だったのは安土城の大黒柱を建てるシーン.縄で縛られた胸高直径10m(正確な数字が劇中で述べられているけど忘れちゃった...)はあろうかというヒノキ.これをかけ声とともに数百人の男たちが引っぱりあげる.もちろんCGなしで.CGでどんな奇天烈な映像でも作れるようになった昨今,このシーンは理屈抜きの迫力と説得力を持っている.
 
 森林科学を学んでいるものとしてぐっときたのは,木曽の奥山に自生するご神木のヒノキを岡部が見つけるシーンだ.岡部がヒノキを抱きしめるシーンを引いたアングルで映しているために,ヒノキの大きさがよくわかる.そのヒノキの神々しさに,理屈はいらない.もちろんここでも変なCGは一切絡んでいない

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 信長は,岡部に築城を任せるにあたって,他の大工と建築計画のコンペをさせる.その際,奈良の大仏殿や北山の金閣寺を設計した名家もプレゼンを行うのだが,このプレゼンも力が入っている.普通の映画ならば,当て馬である岡部以外のプレゼンは簡単に流せばいいのだが,そうはいかない.彼らのプレゼンでも屏風に書き込まれた丁寧な設計計画と精巧な模型が提出される.最後にはある理由でこれらの模型は燃やしてしまうところにも,作り手側の熱意を感じる.もちろんここでも変なCGは一切絡んでいない
 
 あげればきりがないが,事程左様に本作には「生」の映像が生み出すオーラが2時間強にわたって詰め込まれている.これだけでもお金を出す価値はあるだろう.

物語……?

閑話休題,ストーリーについて,といきたいところなのだが,ストーリーは見るべきところがない.というのもいろんな要素を詰め込みすぎてひとつひとつの話がとても薄味になってしまっている.おいしくないお子様ランチを食べたような気分だ.

日本版ローランド・エメリッヒ作品

映像の迫力はすばらしいけど,それ以上は何もない.これって映画感想:ホワイトハウス・ダウン - 閑話休題と同じ感想じゃん!!!
規模感で圧倒するような映画は日本ではなかなか見られない貴重な映画なので,見てよかった.「利休にたずねよ」は本作とは一転,千利休という一人の人物に焦点を当てるミクロな作品だと思うので,期待です.

基本情報

監督:田中光敏
出演:西田敏行椎名桔平福田沙紀大竹しのぶ山本太郎寺島進前田健遠藤章造,西岡徳馬,渡辺いっけい水野美紀石橋蓮司,笹野高史,夏八木勲,河本順一ほか
公開年:2009年
上映時間:139分

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