閑話休題

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ネタバレなし映画感想:ローマでアモーレ−うつに対する一つの対処法−

早稲田松竹で11/30-12/6にやってたときにみました!
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もはや伝統芸能

ウッディアレンの映画はテンプレートの使い回しだ.律儀に毎年公開される作品は,ほとんど「人生のむなしさ」というテーマを扱っている.今回の「ローマでアモーレ!」もご多分に漏れずテンプレートがばっちり使われていた.それでも安定した面白さをキープするのだから,恐れ入る.もはや彼の映画は,難病ものやスパイもの,ヒーローものといったジャンルと同列の「ウッディアレンもの」というジャンルに分類するべきだろう.ま,だれもこのテンプレートを真似できないというのが他のベタジャンルとの違いだけど.

 もちろん個々の作品間で多少のマイナーチェンジは施されている.近年の作品でも「世界中がアイラブユー」はミュージカルだったし,スカーレットヨハンソンの「マッチポイント」はサスペンスと,今までのウッディアレンとはちょっと毛色が違った.「マッチポイント」,「それでも恋するバルセロナ」,「ミッドナイト・インパリ」,「恋のロンドン狂想曲」「ローマでアモーレ!」はヨーロッパの「バカンスもの」とでもいえる作品で,舞台設定に地理的バリエーションがあった.
 でも中身は全部「ウッディアレンもの」なのだ.昭和30年代の日本映画を見ていると,似たような家族もの映画がたくさんあるので次第にデジャブ感にとらわれていくが,アレン映画でも同様のデジャブ感に襲われることがままある.
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ウッディアレンのテンプレート

 閑話休題,それでは自分の考える「ウッディアレンもの」のテンプレートを紹介する.
 登場人物は中流以上の生活を送る人間が中心だ.彼ら彼女らは皆,世間的には「成功者」ととらえられる部類に入る.あるいは将来そうなれるようなルートにのっかっている人間だ.でもみんななんか満たされていない.「 幸せになるにはもっと頑張らなければいけない」そんな表情がにじみ出ている.そしてさらなる経済的成功,社会的名声や,自分とは不釣り合いな人間との恋など,更なる「幸せ」を求めてもがく.
 でもそんな幸せを手に入れたところで,またなんか満たされていない→更なる幸せを目指してもがく,の無限ループに陥るだけ.つまり人生には彼らの追い求める意味での「幸せ」なんて存在しないってのが冒頭に書いた「人生は虚しい」というウッディアレンの諦観ってやつです.
 長くなったけど,僕の考えるウッディアレンのテンプレートは『「今自分の手もとにはないが,頑張ればつかめる幸せ」なんてねえんだよ!っていう答えは分かっている.そのうえで真面目な人たちを「不全感→幸福追求」の虚しい無限ループに放り込んで,その滑稽な様を一緒に嗤いましょう』ってことですわ.

その他のテンプレート

もちろんテンプレートの要素はこれだけじゃない.以下箇条書きで思いつく要素を書き出してみた

  1. タイトルの統一性

大体の作品はクラシカルな作りで,その小説のテーマの導入となる小説の一節や箴言のナレーションとともに黒字に白抜きでタイトルが表示されるという簡潔で古典的な作り.ここでは奇をてらうようなことはあまりない.ウッディアレン映画の冒頭は,ほとんどこれで統一されている.

  1. 知識人「かぶれ」のアメリカ人が必ず登場.

本作のジョン・ボールドウィン曰く,「教養人らしく見えるツボを押さえている」人物.それっぽいバズワードを並べ立ててかしこぶるいけ好かないやつとも言える.要は物知りでモテようとするイケメンってことです.うぅ,字面にすると凄く鼻持ちならん!!!今回のこの役は売れない女優役のエレンページ.他にも無粋なアメリカ人もたくさん出てくる.「ミッドナイトインパリ」のオーウェン・ウィルソンの嫁一家はパリに来てもパーティー三昧,おまけに車で観光地をささっと訪れて大満足というウルトラ無粋ぶりを発揮していた.

  1. ウッディアレンが必ず登場

別に本人がいつも出演しているということではないです.でもちょっとひがみっぽくてぶつぶつと理屈をこねている男というウッディアレンを模しているとしか思えないキャラクターがよく登場する.

  1. 精神科医ディスり.

これもほぼどの作品にも出てくる.毎回ディスられているので精神科医の皆様が気の毒になるくらい.今回はジュディ・デイビスの演じるウッディアレンの妻が精神科医.なかなかいいキャラでした.ウッディアレンは相当精神科医を根に持ってるんだろうな.というか,彼にしてみれば解決する訳のない「人生に対する不全感」が医学的に解決すると言い張るところが気に食わないんだろうな

  1. 他の映画いじり,人物批評など時事ネタが必出

今作はそうでもなかったが(英国王のスピーチのディスりぐらいか)ミッドナイトインパリはマリオンコティヤールの配役を含めてクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」がオチの部分でぼかした結論に対するウッディアレンからのアンサームービーという感じだった.
うーん,もう思いつかないや.でもこんな感じのが毎作でてくるとデジャブ感は避けられない.こんだけテンプレートが固定されてきたのは近年のことなのかもしれない.あと「マッチポイント」は当てはまりが悪い……
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つづきます……ネタバレなし映画感想:ローマでアモーレ−うつに対する一つの対処法−その2 - 閑話休題

基本情報

監督:ウッディ・アレン
出演:ウッディ・アレンアレック・ボールドウィンペネロペ・クルス,ジュディ・デービス,ジェシー・アイゼンバーグ,グレタ・ガーウィグ,エレン・ページ,ファヴィオ・アルミリアート,アレッサンドラ・マストロナルディ,フラビオ・バレンティ,アリソン・ピルほか
公開年:2013年
時間:111分