閑話休題

ブログの効能と言わば何ぞ其れ日々の由なし事の記帳に限らんや

ネタバレなし映画感想:42 ~世界を変えた男~

勝てるならば誰だっていいf:id:ediot:20131128155357j:plain

「ドル札の色は白でも黒でもない,緑色だ.」「私は勝つためならゾウだってチームに入れるさ.」

ーー野球で勝つのに役立つなら黒人でもかまわない.人種差別撤廃という崇高な目標からはかけ離れた身もふたもない考え方だ.しかしそんな現金な人間こそがアメリカの人種差別を打ち破る突破口となった.この映画はそんな現実を教えてくれる.


ストーリー自体はネタバレも何もない.黒人初のメジャーリーガーにして殿堂入り選手,ジャッキー・ロビンソンの3A時代+ルーキーイヤーの伝記映画である.

もちろんジャッキーの「勇敢さ」が世界を変えたというのが映画のメインテーマだが,僕が気になったのは別のところだった.
それはジャッキーにチャンスを与えた人間や,チームメートとして彼を支えた人間は必ずしも全員が人種差別撤廃を目指していた訳ではないということだ.中には黒人に対する嫌悪感を持っていた人間もいたはずだ.「勝つ」という単純な目的のために有能なジャッキーを利用したという側面が強いのではないだろうか.それでもジャッキーが彼らのおかげでチャンスを得たことは確かだ.
現実的な選択が崇高な目的をかなえることもあるのだと気づかされる映画だった.

作り手の野球愛

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でもこの映画の一番良いところは,なんと言っても野球へのこだわりに他ならない.
野球映画は時に,実際に野球をやっているシーンで萎えることがままある.ある邦画では,甲子園出場校のエースピッチャーが恐ろしいほどの女投げを披露していたのをみた瞬間その映画に対する情熱がぐちゃぐちゃに解けてしまったことがあった.野球未経験者の野球演技は,標準語圏出身者の関西弁暗いやめてほしいと思うのは僕だけだろうか?野球部出身俳優はたくさんいるだろうから,その人たちを使えば良いじゃん(ネイティブ関西弁スピーカーは1000万人くらいいるんだから,ネイティブを使えば良いじゃん.).それにひきかえ,この映画では,野球シーンはかなりリアルに描かれている.
例えばこの映画最初の試合シーン.オープン戦初打席を迎えたルーキーのジャッキーに対して,ピッチャーはインハイをえぐる変化球を投げ込んでいく.映像はアンパイア視点で,みている側が思わずのけぞってしまうほど.もちろんエフェクトがかかっているのだが,もろCGという感じはしない自然な映像に仕上がっている.リッキーが二盗を決めるシーンも秀逸である.セカンドベース上に置かれたカメラに向かって,リッキーが全速力で突っ込んでくる.とにかく迫力を伝えるカメラワークが秀逸だった.3Dで見られればもっと良かったかもしれない.
役者陣の動きもリアルさをもたらす大きな要因になっている.予算規模が40millionということを考えると,少し地味なキャスティング(ハリソン・フォード以外は知らない役者だったし)なのは,野球優先のキャスティングだからではないだろうか.ピッチャーのモーションも全く違和感なく見ることが出来た.
野球シーンと並んで秀逸なのは,スタジアムやユニフォーム,実況などの野球周辺の描写へのこだわりだ.
ジャッキーの所属するブルックリン・ドジャースの本拠地エベッツ・フィールドはドジャースのロサンゼルス移転で閉場となったスタジアムだが,その様子は驚くほどリアルに再現されていた.
また,ピッツバーグフォーブススタジアムはレフト側が森になっていて客席がない.これならアメリカのオールドファンも満足だろう.

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エベッツフィールド
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フォーブスフィールド

さらにカージナルスのジップアップのユニフォーム(ダサい(笑)),ラジオ実況のジレットのコマーシャルなど,当時の野球に対する想像をかき立てる描写が随所に見られる.

「どんな野球好きにも野球に関する文句は言わせねえよ!」という作り手の執念のようなものがかいま見られた.

日本でも見たいジャンル

日本でもこういう映画作れないのかな?
沢村栄治王貞治長嶋茂雄江夏豊,広岡達郎,森 祇晶,落合博満などなど,題材になりそうな人物は結構いると思うけどな.